第3回荒れ狂う直人が言えなかった本音
こんにちは。
伊藤 幸弘です。
本日も僕の記事を読んでくださりありがとうございます。
前回に引き続き、今日も子育ての悩みから、ひきこもりや非行など、子供の問題行動に悩んでいる親御さんに役立てる情報をお伝えしたいと思います。
最初から読む場合はコチラからどうぞ↓
第1回 なぜ子どもは荒れるのか?
高校を3カ月で退学してしまった直人。
その原因は2つ年上の彼女、K子にありました。
元カレとの子を妊娠し、自殺未遂までするほど傷ついていた彼女に
「子どもを産もう」と言い、自室のプレハブに引き込みます。
反対する親と、それに反発して荒れる直人。
そんな日々が続く中、突然K子との連絡が途絶えてしまいます。
ますます荒れる直人のもとに、数ヶ月後、K子から1本の電話が入ります。
今日のテーマ
「荒れ狂う直人が言えなかった本音」
K子の口から出た言葉
それは、
「子どもを堕ろした」
というものでした。
直人は逆上しました。
心身ともに傷つくK子を思いやるでもなく、
ただひたすら自分の気持ちを言い募り、K子を責めました。
そんな直人に対してK子は
「直人とは合わないと思う。
直人はすぐに暴力をふるうしいつも怒鳴って怒るだけだし…
もう別れよう」
と告げます。
直人はその言葉に衝撃を受け、混乱しました。
そして、
「K子は本当は別れたくないけど、
親に無理矢理そう言わされているだけだ。
K子の母親がオレたちを別れさせたんだ。」
と思い込んでしまいます。
その結果、怒りの矛先はK子の母親に向けられました。
1週間後、直人は電車でK子の家に向かいます。
バックの中にタオルにくるんだ包丁をしのばせて・・・。
K子の家に着いた直人は裏口から侵入し、台所にいた母親に切りつけます。
騒ぎに気付き、様子を見に来たK子にも襲いかかりました。
幸い2人にケガはありませんでした。
その後、近所の通報で駆けつけた警察に取り押さえられ
署まで連行されました。
直人は泣き続けました。
両親が迎えにきても
「もう頭がおかしくなりそうだ!病院へ連れて行ってくれ!」
と父親に訴えます。
父親は、必死で病院を探し、
紹介を受けた精神科医のもとへ直人を連れて行きました。
話を聞いた精神科医は直人にこう言いました。
「君は何も、どこも悪くないよ。悪いのは君ではなくて親だよ。」
医者の言っていることは確かに正しい意見です。
でも言うべき状況は間違っていました。
医者の言葉を聞いた直人は、家に帰るなりものすごい形相で
「おれがこんなに苦しんでいるのは全部お前らのせいだ!」
と怒鳴り家中のものを壊し続けました。
連絡をもらった僕が駆けつけた時、直人は荒れ狂っていました。
「大変だったなあ。ご両親から話は聞いてるよ。ごくろうさん」
僕の言葉に直人の動きが一瞬止まる。
すかさず僕は直人を抱きしめて
「よかったなあ。
いつも直人のことを思っている、こんないいお父さんとお母さんがいて。
誰に裏切られてもおまえには帰ってくる場所も頼れる人もいるじゃないか」
と話しかけました。
我に返った直人は、目に涙をいっぱい溜めて
「ごめんなさい。ごめんなさい」
と繰り返し謝り続けました。
直人は
寂しがり屋で
常に孤独で
わがまま
そんな少年だったのだと思います。
これが直人の素顔です。
仕事ばかりで自分に気を向けてくれない両親へのいらだちや不満、
それが直人の荒れを引き起こしたのです。
みなさんはここまで読んでどんな感想を持ちましたか?
幸いにも直人の両親は、荒れた息子に戸惑いながらも
なんとか向き合おうとする気持ちをもってくれました。
僕のような第三者の力を借りる決心をし、
仕事を早退して直人の側にいてやる時間を増やし話を聞き、
直人の要求にできるだけ応えてやろうとしました。
直人は荒れながらもそんな両親の意識の変化を
どこかで感じ取っていたのだと思います。
そして、
「ごめんなさい」
という言葉を口にした時から、直人と両親の距離は近づいていきました。
前回書きましたが、直人が荒れ狂っていた原因は両親にあります。
繰り返しになりますが
「親子の信頼関係の欠如」
これに尽きます。
ただ、だからこそ親が変われば子も変わるのです。
子を変えようとするのではなく、親が変わることが大切なのです。
直人はその後、僕の申し出を受けて親元を離れて、
僕の家の近くにアパートを借りて自活を始めました。
その後も色々なことがあって、
時には昔のように親に八つ当たりをしては僕に怒られて。
でもなんとか自動車整備士の資格を取得し、
今は整備士として自動車メーカーで働いています。
「親父を尊敬しているし、
おふくろにはこれからラクをさせてやりたい」
働き始めてからあの直人が語った言葉です。
直人に限らず、荒れる子どもは実にもろく危うい存在です。
自立に向かって、1本の細くて長いロープの上をぐらぐらと
危なっかしく揺れ動きながら生きています。
1歩間違えば足を踏み外して奈落の底。
そんな状態の彼らを支えて
最後までロープを渡りきらせてやることが出来るのは
やはり親しかいません。
荒れる我が子を目の当たりにして
「親子の絆に問題がある」
と気付くことは難しいことかもしれません。
でも
少なくともこれを読んで頂いているみなさんは
「親子の信頼関係」
がどれだけ大切か、気付かれたと思います。
ご自分のご家庭に照らし合わせて、ぜひ意識してみて下さい。
とは言え、
「じゃあ実際にどうすればよいの?」
と疑問に抱かれる方もいると思います。
次回は、解決の糸口を探してもらうという意味をこめて、
児童精神科医として長年にわたり子どもたちを見つめてきた
佐々木正美先生にご協力頂き対談と言う形で
「なぜ荒れるのか?」
ということをもっと深くお伝えしていきます。
それでは、本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。